
79年秋から80年初めにかけて144万枚もの大ヒットを記録した、
12月10日から1月21日の7週間、オリコン№1に輝いたのは、
久保田早紀のデビュー曲「異邦人」。
イスタンブールやエーゲ海をイメージした歌謡曲もあったし、
ピアノを弾きながらストイックに歌う女性歌手も何人かいた。
でも、その独特の大きな世界観を表現した歌手にはそう出会ったことはない。
ボクの中では、彼女は異色の存在だと感じていた。
もちろん、アイドルとも違うし、フォーク歌手でもない。
本当のところは何も知らなかったけれど、
何か、ヒットを狙っている歌手のようには感じられなかった。
♪~ 子供たちが空に向かい 両手をひろげ
鳥や雲や夢までも つかもうとしている ~♪
彼女自作のこの詞は、この曲は、いったいどうしてできたのだろう。
そんなことを考えてしまった。
結果的に、「異邦人」はカラーテレビのCMソングとして取り上げられ、
あれよあれよといううちに大ヒットしてしまったことを、
本人も戸惑っているかのように、思われた。
♪~ よく熟れたオレンジの冷たい重さは
大人びたあなたの優しさみたい ~♪
81年、再びCMで出合った彼女の「オレンジ・エアメール・スペシャル」は、
「異邦人」の彼女とは思えないように、ガラリとイメージが違っていた。
ボクは、そのことにガッカリしたのではなく、
何かホッとして、とても普通の彼女に出会ったような気がしていた。
